ミトシロ書房の業務日誌

■出版社に勤めたのち、フリーランスの編集者・ライターとして独立。『入りにくいけど素敵な店』という著書も出しました。レシピ本や街情報誌が得意なのですが、最近は書籍(単行本)を企画から校了まで、出版社の編集者さんとタッグを組んで制作請負などをしています。週刊誌はレシピなどのグラビアページをはじめ、文字みっちりの取材モノにも取り組んでいます。
■WEBメディアの仕事も歓迎します。場合によって写真撮影、取材コーディネート込みでお受けします。
■四柱推命、周易、断易できますので、占いのご用命もどうぞ。

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2011年12月1日木曜日

お年寄りはニッポンの宝

電車移動中新しいお仕事のご依頼の電話が入り、
いつもの駅からひとつ手前で降りました。

てくてく歩いていると、困った顔の
おばあちゃんが声をかけてきました。

「すみません。教えてください」

―えっ、わたしにですか?

「じつはお菓子屋さんを探していて・・・」

―なんていうお店でしょう?

「名前はわからないんですが、なんか洋菓子の・・・」

ここは岩本町。
このへんでお菓子屋さんっていえば『万惣』か『近江屋』かな?

―それきっと近江屋(おうみや)ですね。

「おおみや(大宮)? おおみや(近江屋)!
たぶんそれです」(おばあちゃん)

近江屋は、岩本町とわが社の間ぐらいの立地。
親切なわたしは、おばあちゃんをご案内することに。

すると、後ろのほうからお連れのおじいちゃんが
とことことついてきます。
ああ、おじいちゃんも一緒で迷ったのね(笑)。

道中、

―こちらは万惣(まんそう)ですよー。
ホットケーキとか有名。

「ああ、昔行ったことがあります」(おじいちゃん)

―で、こちらが有名な『神田まつや』です。

「あらー、よく行くんですよ」(おばあちゃん)
(おばあちゃん、近江屋はその裏だぜ。
盛大に迷ったんだね、なになにえっ、神保町から・笑)

「この裏にもう一軒有名なお蕎麦屋さんありますよね」(おじいちゃん)

―そうです。『藪そば』ですね。
鳥すきの『ぼたん』とかも有名ですよね。

などと、ちょっとした観光気分。
聞くと、埼玉の志木からお見えになったそう。

近江屋につくころには、なんだか代理親(祖父母)孝行気分で
すっかり打ち解けていました。

地元で働いていて方向一緒で、東京のグルメ事情に詳しい編集者である
わたしに声をかけるとは、おばあちゃん見る目あるねー、なんて。

・・・というわけで、みなさんもお年寄りには親切にしてくださいね。


ついでに木村家のお年寄りのお話を。

台所に立たないどころか、お茶のひとつもいれない九州男児。

お風呂からあがったら
「よー」という。
ばあちゃん「はーい」とタオルと着替えを持っていく。

食後の「よー」は
「お茶いれろ」のサイン。

用件も言わず、ばあちゃんの名前も呼ばず。

三味線をはじめたばあちゃんに
「へたくそだからやめろ」と一喝。
ばあちゃん「へたくそだから習っているのに」と
三味線お蔵入り(笑)


末の娘がずーっとヨメにもいかずに高齢に。
ある日連れてきただんなさま候補(バツイチ子あり)に
「木村家にそんな男はだめだ!」と大怒り。
結婚式の写真、じいちゃん顔コワイ。
まあまあ、せっかくのイケメンが台無しよ。
まあ、結局みんなかよくなるのですがね。


じいちゃんはなかなかの長生きさんで、
次男の還暦祝いをした翌日に
「おれの役目は終わった」とばかりにぶったおれたそうです。

昭和元年生まれ、平成最後の硬派九州男子・木村一之殿。
いっぱい働いて立派な会計事務所をつくり
立派な家を建ててばあちゃんをだいじにして。
いい人生やったやんか!

病床にて、
口もきけず、手もあがらないじいちゃん。
ばあちゃんと二人マジに見つめ合っちゃってて、もう・・・。


(木村悦子)